大きく息を吸おう!
最終更新: 2020年9月10日
withコロナのニューノーマル、マスク姿もすっかりと馴染んでしまった印象があります。
海外のセレブたちも、マスクのデザインとドレスをコーディネイトさせて楽しんでさえいる雰囲気です。
帽子やバッグ、バンダナとマスクの色柄を合わせて見ると、それはそれとしてアリなのかなと感じています。
どんな状況でもオシャレに楽しもうとする女性たちの姿勢には脱帽してしまいます。
マスクをすることでウイルスや細菌の空気感染を避ける。
そのためにマスクはフォルターの役目をしているのですが、どうやらいいことばかりでもありません。
マスクのゴムで耳のまわりがかぶれたり、顎のまわりが常に蒸れている不快感があったりします。また、顔の表情が見えないことでコミュニケーションのあり方も変わっていくように思います。
とくに日本人は、表情で相手の気持ちを読んで忖度をするということに長けてきました。
忖度という言葉にはあまりいいイメージはありませんが、それでも相手を思いやる、相手のことを気遣う気持ちは日本文化の根底を培ってきたものに違いありません。
生理学の視点から見ると、大きく息を吸えないことが一番の懸念材料です。

「息」は「生きる」ことに通じる。
日本語の妙ですね。
呼吸することで酸素と二酸化炭素をガス交換して、すみずみの細胞まで酸素が届けられます。この働きによってエネルギーが生み出されてヒトは生きていくことができます。
閑話休題。
胸式呼吸、腹式呼吸という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
よく言われるのは、
・女性は胸式呼吸
・男性は腹式呼吸
…なんて言います。
実際に、肺を取り囲んでいる肋骨と横隔膜が柔軟に動くことで十分に息を吸ったり、吐いたりすることができます。
こちらが胸式呼吸。
おもに肋骨が動くことで息を吸ったり、吐いたりしています。
女性はこちらのタイプが多いです。

こちらは腹式呼吸。
おもに横隔膜が動くことで息を吸ったり、吐いたりしています。
多くの男性と、ヨガや呼吸法を行っている方はこちらのタイプです。

なぜ、女性=胸式呼吸となったのでしょうか。
それには生物学的な戦略があります。
ヒトの体幹(腕と足を除いた胴体の部分)は、胸(胸郭)とお腹(腹腔)に分けられます。
胸郭は鳥カゴのような形をしていて、呼吸に合わせて肋骨が上下に動きます。
これが胸式呼吸。
肋骨でできたカゴの中には、肺と心臓という大切な臓器が収まっています。

横隔膜から骨盤までの部分は、お腹=腹腔(ふくくう)と呼ばれていて、
ここには胃や肝臓、小腸、大腸などの消化器や腎臓、膀胱といった泌尿器があります。
また、女性には骨盤に収まる形で卵巣と子宮という女性特有の臓器があります。
そして、この点が生物学的に女性が腹式呼吸を選択してきた理由になります。
そう、男性と女性のもっとも大きな違いは、女性は妊娠、出産をするという点です。
着床して妊娠中期(4ヶ月目)になると、外見上もお腹まわりがふっくらとしてきます。
そして、5ヶ月目に入ると早い人では赤ちゃんの胎動を感じられるようになります。
この頃は女性が「母親になる」ことを自覚する時期とも言われています。
女性が胸式呼吸を選択する理由、そろそろお気づきでしょうか。
腹式呼吸では、上のイラストにあるように息を吸うときに横隔膜が下に下がります。
すると当然、お腹は圧迫されますね。
つまり、腹式呼吸では息を吸うたびに横隔膜が下がって腹圧がかかり、胎児のいるスペースが圧迫されます。これではたまったものではありません。
胎児の成長にとって、腹式呼吸は大きな負担となります。
胸式呼吸であれば、胎児のいるお腹に圧力がかかることはありません。
そのため(無意識のうちに)多くの女性は胸式呼吸を選択するようになった、と言われます。
ところで、日本の女性がブラジャーをするようになったのはいつ頃からでしょうか。
そもそも日本は着物文化だったため、胸を目立たせるという習慣はありませんでした。
江戸時代には、男性はふんどし。女性は腰巻きという巻きスカートの形をしたものが、いわゆる下着として普及しており、それ以外には下着はありませんでした。
西洋でも、現在のブラジャーの原型となる下着ができたのは20世紀初頭とされています。(引用:ブラに見る、女性の自由と権利と官能の歴史。【FASHION ENCYCLOPEDIA Vol.16】)
日本では昭和初期(1930年頃)に初めて、乳房バンドという呼称で下着が市販されるようになります。
このブラジャー、目的はもちろんバストの形を整えることにあります。

それはしかし、先ほどから見てきた胸式呼吸にとってどのような影響があるでしょうか。
胸式呼吸では息を吸うときに肋骨が上に上がります。
じつは、ブラジャーをすることで肋骨を締め付けているため、息を吸う本来の動きが制限されていることになるのです。バストを寄せて上げるための締め付けがきついほど、肋骨も動きが悪くなり、その結果、呼吸が浅くなってしまいます。
スポーツブラやブラトップを身につけるほうが、
呼吸が楽なのは多くの女性が経験済みのことと思います。
締め付けの少ない下着を選ぶことで、肋骨は制限されることなく動きやすくなります。
大きく息を吸うことは、快適な身体づくりの第一歩ですね。
インスタグラムでも、大きく息を吸うためのセルフケアをご紹介しています。
(画像をクリックするとインスタグラムに移動します)
ご参考)サチュレーション
サチュレーションとは、血液中の酸素濃度を計測することができる機械です。
在宅医療に関わる看護師さんは必ず携帯しています。
おもに呼吸器疾患(COPDなど)を抱えている方は呼吸の状態を計るためにサチュレーションを使用しています。
あい治療院でも、来院される方の万一に備えてサチュレーションを用意しています。